★超小型人工衛星用無線機 501A型CW送信機 2013年開発完了★
   300万km以上の遠距離通信に挑戦!

この送信機は、2014年12月3日「はやぶさ2」のロケットへ相乗して同時に打ち上げられた、多摩美術大学の芸術惑星
「ARTSAT2 DESPATCH」に搭載、深宇宙から地球へ430MHzのCW信号を送信して、長距離通信に成功しました。


「はやぶさ2」は惑星探査後に地球へ戻りますが、多摩美術大学の「ARTSAT2-DESPATCH」は帰りの燃料を持たず、
永遠に地球へ戻りません。(1年後は1億km以上?)
打ち上げ後約1週間430MHz帯でCW(モールス)信号を送信します。
 ↓関連リンク
 
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  ------------- 設計方針 ----------------
目標の通信距離300万kmを達成するには、変動が少ない非常に安定した周波数で送信して、受信側の狭帯域フィルタ
によってノイズに埋もれる程に小さくなる信号を検出可能にすることが最も重要で難しいところ。
回路構成を検討した結果、周波数安定度±0.28ppmのTCXOを基準周波数として安定に動作するPLL回路方式とした。
電圧制御発振回路(VCO)はC/Nを重視して、水晶振動子による発振周波数を電圧制御する。
水晶振動子は54MHz付近で発振、8倍に逓倍して430MHz帯にする。
基準発振用のTCXO(20MHz)は分離して、送信機自体の発熱による温度変化で周波数が変動するのを低減する。
受信機と組み合わせる場合に備えて、回路図へアンテナ切り替え回路と分岐コネクタCN3を追加。
制御信号として送信中のKey OFF時に3V/1kΩを出力する。(CN1-6:R3V)


 ------- <430MHz帯CW送信機の主な仕様 TXE430MCW-501A > -------
(1)送信出力・・・・・・ 7W
(2)消費電力・・・・・・ 約24.5W
(3)電源電圧・・・・・・ 7V
(4)動作環境温度・・・・ -30〜+70℃(周波数安定度=±0.3ppm以内)
(5)ケース外形・・・・・ 120×42×16.5mm
(6)質量・・・・・・・・ 約116 g (本体:97g+OSC:19g)


 -------------- < CN1 インターフェースの仕様 > --------------
(1)KEY:Low=O.5V以下、High=2.5V以上かOpen
(2)+VB:7V(5〜9V)
(3)CLK:Low=O.5V以下、High=2.5V以上
(4)DAT:Low=O.5V以下、High=2.5V以上
(5)STB:Low=O.5V以下、High=2.5V以上
(6)R3V:1kΩを通して約3Vを出力(送信のキャリアOFF時)
(7)TXE:Low=O.5V以下、High=2.5V以上
(8)C3V:3V(35mA以下)を出力 (+VBへ電源供給中は常に出力する)
 ★C3VはTCXOの電源と共用につき、送信中に大きい電流変化があると送信周波数が変動する。

 --------------- < 動作概要 > ---------------
(1)CN1:1〜5は標準の301A型に準じる仕様(+VB=7V、PLLは301A型と同じ数値で設定可)
(2)TXE=HighでPLL ON(消費電流は約50mA)、更にKey=Lowで送信:キャリアON(消費電流は約3.5A)
(3)R3V:TXE=HighおよびKey=Highの時に1kΩを通して約3Vを出力(送信のキャリアOFF時)
(4)TXE=LowおよびKey=Highまたはopenで、TCXO以外の全動作停止 (電源ICやパワーモジュールの漏れ電流とで消費電流は数mA)
(5)周波数は外部マイコンから設定制御される。(PLL設定値は送信周波数の2分の1)
  VCOで使用する水晶発振周波数は、三田電波製の場合、送信周波数より約20kHz高い周波数の8分の1とする。
  送信周波数が未定の場合は、仮の周波数で調整して作り上げた後に、無線局としての免許周波数が確定したら再調整する。

 -------------- < CW送信の制御手順 > --------------
(1)+VBを供給する・・・・KEY ONする10秒以上前から送信終了迄 (約5mA)
(2)TXEをHighにする・・・KEY ONする1秒以上前から送信終了迄 (約50mA)
(3)PLLデータ設定・・・・TXE=Highで、KEY ONする1秒以上前に実行 (約50mA)
(4)KEY ON/OFFしてモールス信号を送信(KEY ON:約3.5A、KEY OFF:0.05A以下)
(5)送信終了後、TXEをLowにして+VBの電源供給を停止する。
  ただし、送信終了後もCN1-8(C3V)を受信機等へ供給する時は+VBを供給しておく。

 -------------- < PLL制御 > --------------
ここをクリックするとPLL制御のテストプログラムをダウンロードできます。(TESTPRG-TXE430MCW-501A.lzh)
マイコンとのインターフェースは301A型衛星用無線機に準じた仕様であり、下記のテストボードで制御可能。
http://www.nishimusen.co.jp/eisei2008/TRXETEST-3.html
  (TXEのラインへ10kオーム程度のプルアップ抵抗を追加)


 ------------------- < ブロック図 > -------------------


 < 外形図 >

 < ケースと部品配置図 >

 < 回路図(最新版) >

 < 基板図(最新版) >

 ----------- < 430MHzの送信波を受信した音声出力 > -----------
下図は、CW送信機の出力を430MHzの受信機で受信してスピーカ音声出力をArgoで表示したもの。
上側は通常のCWモードで、下側は3S_dot設定にして拡大表示。
秒単位の周波数変動は1Hz以下に収まって安定な信号を送信している。(下の図をクリックすると受信音を再生)



 -------------- < 送信波スペクトル > --------------
下図で上段左側の特性は±0.5kHzの範囲を拡大したもので1秒送信1秒停波の断続。(占有帯域幅計測値は34Hz)
上段の右側はスパン1MHz、下段左側はスパン100MHz、右側は0〜4GHzのスパンで広範囲に測定。
<スプリアスは-70dB以下で良好>
   ↓No,001の送信スペクトル

   ↓No,002の送信スペクトル


 -------------- < 送信機の内部 > --------------



 ---------------- < 逓倍用増幅フィルタ回路のシミュレーション > ----------------
54MHz,109MHz,218MHz,436MHz (図をクリックすると拡大します)




 ------------------- < 20MHz,0.28ppmのTCXO > -------------------
430MHzにおいて±5kHzの可変範囲が見込めることを確認した・・・
301A型のCW送信と同じPLL制御可能
(目標の周波数±1kHz以内に微調整可能) TCXOへ電源3Vを接続して動作状態を確認しました。
発振周波数20MHzの22倍高調波を430MHz帯無線機のTR-851/KENWOODで受信した信号波形。↓

<<上の画像をクリックすると録音したトーンを聞けます。 TCXO20MHzx22-440MHz.mp3 >>

図の右側は「Argo.exe」Mode=3s dotsの設定で受信信号のスペクトルを拡大して時間経過を表示したもので、
1Hz以下の分解能と推測されるフィルタを通して信号を確認できた。
波形図の中央付近で断続しているのはTCXOの電源を約5秒周期でON/OFFした時の変化。
やはり運用中はTCXOの電源を切らない(TXE;ON)のが良い。
波形図で後半の右側1/3は、録音自動再生で最初に戻って左側の初めからと同じ波形を表示している。
この実験はTCXO出力の22番目高調波をCW受信機で受信したものでありPLL回路を組んだ時の波形に近い状態です。
環境温度が変動すると中心周波数が±122Hz/430MHz以内で変動するが、この実験では室温の変動無しで実施した。

OSCユニット外観写真 (画像をクリックするとPDFファイルへリンクします)




★下記のセラミック振動子VCO回路は、24逓倍後の近傍ノイズが広がってC/Nが良くないので、54MHz帯の水晶振動子に変更した。

 ------------------- < VCO温度試験 > -------------------
セラミック振動子を使う場合のVCO回路を組んで実験したら、-40〜+80℃の範囲で動作することを確認できた。
VCO制御電圧0V〜3Vに対して18.20〜18.25MHzの範囲を制御可能で、これを24逓倍すると436.8〜438.0MHzに相当する。



パワーモジュール入荷 RA07M4047MSA <430MHz電力増幅 50mW入力で7W出力>








☆このページは依頼元「多摩美術大学 芸術衛星ARTSAT プロジェクトチーム」の了解を得て公開しています。


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-----編集責任者:西 裕治 (Ji3CKA)-----