ローディングコイルの輻射機能は? -------------------------------------------------------------- 「短縮アンテナのローディングコイルがシールドされていると、輻射性能が劣化する」 という説が聞かれるが本当だろうか? この説を考察してみる。 アンテナエレメント自体の損失はゼロと仮定すると空間へ有効に輻射される成分は概ね、 アンテナエレメントから輻射+ローディングコイルから輻射=送信出力−コイルの損失 ローディングコイルには電力増幅する機能が無いから、空間へ輻射される成分の合計が それで増加することは無く、コイルの損失分が減るだけである:エネルギー保存の法則 そこで、ローディングコイルから空間へ輻射される成分の大きさが、果たしてどれだけ 有るのかということになる。 コイルの直径が1mもあれば有効なループアンテナとして機能するだろう。 しかし実際には、せいぜい直径1cm〜3cm程度の空芯コイルとして作られるのが多い。 これは波長11mに対して非常に小さい実効面積のループアンテナである。 このようなサイズのコイルでは百分の1にもならないような小さい輻射効率ではないか? もし、そういう小さいコイルに大きい輻射性能が有るのなら、アンテナエレメントを 省略してローディングコイルだけで高性能な超小型アンテナが作れる訳だが、結果は 使い物にならない低性能な物になるでしょう。 上記の推測が正しいとして、何故ローディングコイルがシールドされているかどうかに 拘るのかという点を考察すると、 アンテナエレメントをλ/4より大幅に短縮したらローディングコイルのインダクタンス は大きくなる。 チップコイルのような小さい線径と直径では損失が大きいから、空芯コイルの場合で 直径は1cm〜3cm程度の形状になる。 そこで、周囲の回路へ干渉しないようにシールド板を近くへ配置するとコイルのQが 劣化して損失が増える。 コイルとシールド板の距離はコイルの直径の2〜3倍以上離すのが望ましく、それより 近ずくと急激に損失が増加して、アンテナエレメントからの輻射が減少してしまう。 従って、バカでかいシールドケースであればQが劣化せずに効率が良いが、現実には 小さく作らざるを得ない場合が多い。 その結果「ローディングコイルをシールドすると性能が劣化する」という都市伝説が、 生まれたのではないかと推測するが、いかがでしょうか? 上記の見方が正しければ、 ローディングコイルをトロイダルコアに巻くのは小型化する一つの方策である。 トロイダルコアの比透磁率が大きければ、コイルから周囲への磁束の漏れが少ない から相互干渉が小さく、シールド板を省略し易い。 また、金属ケースによる損失も少なくなる。 今回の試作機は周波数関係とコイル間の配置や角度を考慮した設計で、ローディング コイルはシールド無しでも問題が無かった。 ただ、ロッドアンテナとの距離が近すぎるので、それによる損失は若干有りそうだ。 これは現在の構造からやむを得ないところ。